- 「ユニバーサルデザイン」の活用に不安があるけど・・・
- 「ユニバーサルデザイン」の活用方法が分からない?
- 「ユニバーサルデザイン」の活用方法を分かりやすく教えて!
「ユニバーサルデザイン(universal design)」とは文化、年齢、性別、障害等の有無や能力差に関係なく、誰でも利用できることを目的としたデザインのことですが、内容がよく分からず活用できていないケースは非常に多いです。
私は機械技術者として25年以上働いており技術士一次試験にも合格しておりますが、国際化や高齢化が進んだ現代社会において、「ユニバーサルデザイン」の活用が重要になると考えます。
そこでこの記事では、機械設計の初心者でも分かりやすいよう「ユニバーサルデザイン」を取り入れる場合について設計プロセスの中で工夫すべき点を解説します。
この記事を読めば「ユニバーサルデザイン」が理解でき、設計業務に活かすことができます。
目次
1.開発する新製品の概要
開発する新製品は高齢の操作員でも操作が容易な水門設備とする。ユニバーサルデザイン(以降、UD)を取り入れた水門設備の設計業務である。開発責任者として設計審査(DR)を通じて開発設計のマネジメントを遂行する。
2.全体的な製品開発の進め方
本製品の開発プロジェクト範囲と順番は、①企画段階②構想設計段階③詳細設計④試作評価である。なお、生産フォローは次のステージとするため論述しない。以下に調査、検討すべき事項とその内容を述べる。
- ①企画段階(企画テーマの設定)
顧客要求仕様を把握・整理して企画のテーマ・品質基準を設定する。 - ②構想設計段階(QCDの見通し)
構想資料・技術資料から製品企画書・品質保証基準書、重要機能部の構想等を行い、QCDを見通す。 - ③詳細設計(QCDSE)
信頼性(強度設計)・安全性・環境性・QCDの見通しからQCDSEを具体的にする。 - ④試作評価(機能・性能評価)
組立性・仕様・性能・QCDSEの見通しからRA評価を実施する。
補足)RA評価とはRisk Assessment評価のことで将来のリスクに備えるための一連の活動の総体。一般的にはリスク特定、リスク分析、リスク評価の各工程からなる一連のプロセスとされる。
3.製品設計部門で業務を進める手順について
①~④の手順での留意すべき点と工夫点を述べる。
- ①企画段階
事前の事実検証に留意する。具体的には、UDを取り入れた水門設備の試作評価時の公平性・単純で直感的・身体的な努力の有無といった顧客が重点をおくべき要求品質をインプットとして、QFD(品質機能展開)を活用する。工夫点は、技術の品質要素を要素部品に展開する「技術展開表」以外にコスト展開、信頼性展開、業務機能展開を計画する。 - ②構想設計段階
事前の仮説検証に留意する。工夫点は、CAE解析を元に仮説設定を行い、設計案を評価する。結果をナレッジデータとして次工程で活用する。 - ③詳細設計
信頼度に留意する。UDの程度を客観的に評価する必要がある。そこで、UDマトリックスを用いてUD度の算定を行い信頼性を向上させる工夫をする。 - ④試作評価
強度に留意する。工夫点は、UDを行うことで装置・部材の軽量化や構造が複雑化するため強度の妥当性確認する。
4.関係者(営業ー企画ー生産ー品質)との調整方策
検討事項の評価以外に、工程ごとに3次元CAD、シミュレーション及び試作機を使用し、専門外でも合意形成しやすい可視化を行うことを調整方策とする。
- ①企画DR
シミュレーション画像の活用。 - ②設計DR
VR(拡張現実)を用いてUDをイメージ化する。 - ③妥当性DR
高齢者に試作機を操作してもらい、UDの要求を満足しているか確認を行う。 - ④量産DR
生産性・施工性・量産品質確保・メンテナンス性について試作機を用いて審査し、量産決定する。
補足)DR:design review・・・商品企画、製品企画、製品設計、生産準備などの各設計フェーズの最終段階で、次の段階に移行してよいか確認する審査会議
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