- 「3Dプリンタ」に興味はあるけど活用できるか不安・・・
- 「3Dプリンタ」を製造業へ導入する場合の課題が分からない?
- 「3Dプリンタ」を製造業へ導入する場合の課題とその解決策を教えて!
「3Dプリンタ」は、従来にない高い自由度でものが作れるようになり、製造業のあり方を大きく変えていくのではという期待が持たれていますが、普及により様々な課題が生じることが予想され、機械設計の技術者の立場から解決策を考えるケースは非常に多いです。
私は機械技術者として25年以上働いており技術士一次試験にも合格しておりますが、最近まで3Dプリンタの知識が全くなかっため、導入にあたっての課題が全く考えられず苦労した経験があります。
そこでこの記事では、「3Dプリンタ」の製造分野への普及により生じる課題について解説します。
なお課題の分析にあたっては次の①~③の視点に着目しています。
①メーカー側の視点(製造、設置の容易さ等)
②ユーザー側の視点(品質、機能性、利便性等)
③社会の視点(安心・安全、環境、持続可能性等)
この記事を参考にして「3Dプリンタ」の普及により生じる製造業の課題が理解できれば、技術士二次試験に合格できるはずです。
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1.3Dプリンタの普及による変革の内容及び課題の抽出
1.1 3Dプリンタの普及による変革の内容
具体的に製品として水門設備を例にする。3Dプリンタ(以降、3DPと呼ぶ)技術の普及が促進することで以下の変革が予想される。
- ①製造工程の省略化等(メーカー側の視点)
・金型(鋳造)や締結部品が大幅に減少し製造工程の省略化が進む。
・大きなロットサイズでなければ製造できないという制約がない。
・使用場所、またはその近くで生産できるようになるため、生産の柔軟性が高く
なる。 - ②製品の高機能・高性能化(ユーザー側の視点)
・複雑な形状の製造が技術的に可能になり費用対効果が高い。
・機能に基づいて製品を設計することが可能である。
(複雑性が増してもコストは上がらないため) - ③ゼロエミッションの推進(社会の視点)
生産工程では、材料を取り除いていくのではなく足していくので、廃棄物を最小限に抑えられゼロエミッションの推進に貢献できる。
1.2 変革の結果発生する課題の抽出
次に3DP技術の普及による生ずる変革の結果生ずる課題について抽出する。
- ①製品品質の確保(メーカー側の視点)
・造形スピードの遅さ:一般的に、3Dプリンタは1cm造形するのに約1時間かかる。積層ピッチや造形方式によっても違うが、10cm程度のものを作るのに10時間かかる計算になる。実際の生産現場では、造形スピードの遅さは大きなマイナス要素である。
・精度の低下:3DPは加熱しながら積層するものが多く、形状によってひずみが生じることがありうる。切削加工なら0.01mmで仕上げられる精度が、3Dプリンタは0.1mm程度。キーエンスの3Dプリンタの積層ピッチは0.015㎜でクラストップレベルであるが、材料の樹脂が熱などで誤差を生むため、実際には実力値で±0.1mmである。積層ピッチが劣るプリンタなら、精度はさらに低くなる。
・設計知識:3Dプリンタの造形には、3D CADのモデリングが必要である。最近では3Dスキャナから直接造形できるようになったが、スキャナのデータでは表面だけで内部が再現できない。構造まで造形できる良さを活かすには、3DーCADを使いこなす知識が求められる。
・造形不具合:特に3DPを使用する側の課題として、レーザーや電子ビームなど高温の熱源を使用するため、「熱反りによる造形物の変形」が生じる。求める形状を造形するためには試行錯誤がどうしても発生するため、経験によるノウハウの構築が必要となることである。 - ②製品の機能・性能等(ユーザー側の視点)
・メンテナンス性の低下:従来、消耗部品はネジで締結し、劣化すれば取り外して替えていたが、3DPで一体で製作してしまうと取り替えが出来なくなる。
・コスト上昇:機種にもよるが、通常のABSペレットなどと比較すると、3Dプリンタの材料コストは100倍近くになる。しかも使った分だけ材料がいるので、製品が大きくなればなるほどコストがかさむ。簡単な形状でも、量産でコスト削減できるわけではない。
・新素材の開発:近年は金属やゴムライクといった材料も登場したが、一般的には、ABSやPLAなどの樹脂が主流である。方式ごとに使える材料が決まっているので、完成品は、材料の特性に大きく左右される。造形のスピード、精度、強度、コストといった要素も材料と密接に関わっているので、新素材の開発は大きな課題といえる。 - ③製品強度(社会の視点)
・強度上の課題:材料を1層ずつ積層していくので、積層界面が脆いという弱点がある。上から押さえつける分には強いが、横から押すと簡単に壊れてしまう。
2.課題を解決するための具体的方策
上記課題のうち、造形不具合に関する課題について具体的方策を提案する。造形品質に関する課題を解決する上でまず重要なのは造形不具合に対してどの要因が影響を及ぼしているのかを把握することである。では、造形不具合にはどういった要因が考えられるのかを列挙あうる。課題は大きく2つに分類できる。
- 熱に起因する課題:反りや残留応力、メルトプールによるボイドの発生がある。
- 構造に起因する課題:不適切なサポート材形状による変形や破損である。
これらの因果関係についてデータを蓄積し、AI(人工知能)を用いてデータを解析し、最適な熱、構造を推測することで人間による試行錯誤的な作業をなくし、かつ最適化を図ることができる。
3.具体的方策がもたらす効果・メリットとリスク・デメリット
3.1 具体的方策がもたらす効果・メリット
人間による試行錯誤的な作業をなくし、かつ3DP技術に用いるパラメータの最適化を図ることができる。これにより、造形不具合の課題を解決でき設計上の制限がなくなり、3DPを用いてより高品質の製品を製造することができる。
3.2 具体的方策がもたらすリスク・デメリット
造形不具合が解消されることによってどのような複雑な製品も製造可能となるため、知的財産権侵害と違法物の製造を容易にする可能性がある。前者は、「知的財産」(知的財産基本法 2 条 1 項参照)と肖像権やプライバシー権をも含む広範な権利侵害が想定され、より具体的には、間接侵害の問題がある。このため法律や制度の整備が必要になる。
4.まとめ
以上
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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